日々の感想

アニメ・アニソン・イベント等の感想の備忘録です。

「この世界の片隅に」を観た。

更新が微妙に億劫で、二ヶ月強ほどこのブログを放置していた。

この世界の片隅に」を観たので、その感想を記そうと思う。

ネタバレ気にせず書くので、注意。

 

 

 「この世界の片隅に」を観た。

 11月12日に公開したので、私が観に行った12月4日時点でもう3週間経っているわけだけども、どうも世間的にもだんだん話題になっていっているようだ。

 年末にかけて上映館も増えるとのことで、だんだん尻すぼみに上映館が減っていくのが常の映画において、珍しいことだと思う。

 

 前評判で、戦前の呉の様子がリアルに再現されていると聞きつつも、絵柄的にそうリアルな絵でも無い。どういった感じなのかなと思いながら観に行った。

 観て分かったこととして、リアルというのは写実的という意味ではなくて、空気感がリアルで、まるで自分がその時代・その場所に放り込まれて一緒に体験しているかのような感覚にさせられるということだった。

 時代設定としては、作中では原則的に昭和で表記されていたわけだけども、昭和初期から終戦までだった。つまり、日本史的に言うとまさに日中戦争から始まる15年戦争真っ只中というわけだ。

 戦争中、広島、となると、まあだいたいが原爆をメインテーマに据えてその悲惨さだの戦争の恐ろしさだのにフォーカスした映画になると思っていた。そういった普通の戦争・原爆がテーマの映画の場合、その悲惨さなどにフォーカスするがあまり、遠い昔の世界で起こったどこか他人の出来事という感が否めない。しかし、この映画の特色的な点は、その時代・場所の設定であるにもかかわらずも、あくまで日常の中の戦争、日常の延長で山の向こうに落ちた原爆、であるように思わせる所だ。確かに戦争の真っ只中、まして軍港の呉であるから、主人公自身も焼夷弾空爆にも遭っているし、身近な人間も亡くなり、自身の右手も失っている。でも、あくまでそれを特異な事と思わせない空気があった。

 たいていの映画では、時代背景の歴史的な説明などが入るだろう。しかし、この映画ではあくまで、そういう情報はほとんど無い。主人公が見聞きしたこと、それが鑑賞者が得られる情報の全てだ。確かに、考えてみれば当たり前のことで、その時代に戦争を経験している人は、起こっていることなんて知らない。歴史なんて後の時代から能書きが付けられて始めて成立するものだからだ。だから、主人公と同じ情報量の中に置かれることも、映画の中の世界を身近に思わせる1つの要因だと思う。